漫才の祭典「M-1グランプリ」で初の“満場一致”となる完全優勝を成し遂げたのが、2006年の“チュートリアル”。
その作品は「M-1史上最高傑作」との呼び声も高いが、彼らの漫才のどこが革新的だったのだろうか…?
2001年の「M-1」決勝では比較的オーソドックスな漫才だったというチュートリアルだが、2005年の「M-1」決勝では進化をみせたという。
(以下引用)
それは、徳井が、バーベキューの串に具材をどういう順番で刺していくのかを真剣に語るという独創的な設定の漫才だった。どうでもいい話題を熱く語る徳井が、福田をどんどん一方的に巻き込んでいく。
これが、「妄想漫才」と呼ばれるチュートリアルの新しい漫才の形だった。この年のM-1では、彼らは5位に終わったものの、新たな笑いの片鱗を見せることができた。
(引用元:日刊サイゾー 文=ラリー遠田)
2002年以降は決勝にも上がれなかった彼らだが、“妄想漫才”の形がひとつのきっかけになったようだ。
2005年の決勝に続き、2006年にも決勝に這い上がったようで…?
(以下引用)
この年、チュートリアルは1本目のネタ「冷蔵庫」でお笑い界に衝撃を与えた。この年の彼らの漫才のどこが画期的だったのか?
それは、一言で言えば、「ボケない漫才」だったということに尽きる。漫才では普通、「ボケ」と呼ばれる「笑わせることを意図した台詞」が何度か繰り出されるものだ。
だが、チュートリアルの漫才では、ボケ役のはずの徳井は、一度たりとも意図的にボケようとはしない。彼はただ、初めから感性がズレていて、一から十までボケている人間そのものを演じているだけなのだ。
福田が「冷蔵庫を買おうと思っている」という話を切り出すと、徳井はそこに異様な食いつきを見せる。他愛ない話でどんどん勝手に興奮し始める徳井を見て、福田は少しずつ彼の異常さに気付き、脅え始める。
(引用元:日刊サイゾー 文=ラリー遠田)
双方がボケとツッコミを演じる「笑い飯」のようなパターンは既にあったのかもしれないが、「ボケ人間を演じる」というのは当時、かなり斬新だったようだ。
見事決勝ステージへ進出した2本目でも、チュートリアルはこのパターンを全面に押し出した。
(以下引用)
2本目のネタでは、自転車のベル(チリンチリン)を盗まれたという話をする福田に対して、徳井が自分のチリンチリンが盗まれたときの体験談を深刻そうに語り出す。そして、徳井の妄想がエスカレートした果てに、衝撃の大オチが待ち構えている。
05年と06年のチュートリアルのネタの違いは、「意図的なボケの回数」にある。05年の時点では、漫才の中にいくつか「意図的なボケ」が挟まっていた。つまり、明らかに笑いどころだと分かるような部分が何カ所かあったのである。だが、06年には、ついにそれさえも払拭され、徳井という人間そのものがボケているだけの漫才が完成したのである。
こういう形の漫才を演じる若手芸人は、他に例がないわけではない。ただ、徳井ほど、感情を込めて真剣に妄想キャラを演じ切れる芸人はあまりいない。だからこそ、切れ味鋭いボケのフレーズなどが存在しないにも関わらず、彼らの漫才には圧倒的な爆発力と勢いがあったのだ。
(引用元:日刊サイゾー 文=ラリー遠田)
2005年「バーベキューの焼き方」にはまだ「ボケ」とわかる要素が残っていたというが、2006年「冷蔵庫」と「ちりんちりん」では「ボケ人間」を演じるパターンに徹したようだ。
ただこの「ボケ人間」、台本に沿って演じれば誰でもできる芸当ではない。
徳井の感性や持ち味が存分に生かされてこその代物といえる。
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コメント
先駆者というのは栄冠をつかめるかどうかは判らないもの。
認めてもらえてよかったですね。